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コラム

発注事業者が受託事業者に対して発注する際に作成すべき発注書面とは?

執筆 那須 秀一 / 小野 晃輝
業務分野
テーマ 下請法(取適法)、フリーランス法、貨物自動車運送事業法
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執筆日

2025年7月28日

 2024年11月1日に特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(以下「フリーランス法」といいます。)が、2025年4月1日には改正貨物自動車運送事業法(以下「トラック法」といいます。)が施行されました[1] [2]。また、現行下請法(以下「下請法」といいます。)の改正法(以下「取適法」といいます。)についても、2025年5月16日に成立し、2026年1月1日に施行されることが決まっています[3]。フリーランス法、トラック法、および下請法(取適法)のいずれにおいても、発注事業者が(中小)受託事業者やフリーランスに対して一定の業務を委託する場合には、各法律上の要件を充たす発注書面等を一定の方法により作成・交付しなければならない旨(以下「発注書面等作成義務」といいます。)が定められています。
 各法律における発注書面等作成義務の内容には共通する部分がある一方で、適用される法律によって発注書面等に記載すべき事項や発注書面等の交付方法等が異なる点(例えば、電磁的方法による提供の可否)も存在しています。そのため、上述した複数の法律が適用される場合、どのような内容を記載した発注書面等を、どのような方法で作成・交付すればよいのかを容易に導くことはできません。本コラムでは、各法律における発注書面等作成義務のうち、下請法(取適法)、フリーランス法、およびトラック法の規定に基づく発注書面等作成義務について整理してご紹介いたします。
 なお、本コラムは執筆時点における情報を前提として作成したものですので、実際に発注書面等を作成する際には、最新の情報に基づいて作成されるようお願い申し上げます。

第1 発注書面等の記載内容

1 各法律における発注書面等の記載内容

 まずは、下請法(取適法)、フリーランス法、およびトラック法が単独で適用される場合を想定し、それぞれの法律に基づく発注書面等作成義務のうち、発注書面等の記載内容についてご紹介します。

(1) 下請法(取適法)

 下請法(取適法[4])では、3条1項において、親事業者(委託事業者[5])が下請事業者(中小受託事業者[6])に対し、下請事業者(中小受託事業者)の給付の内容等を明確に記載した書面(以下「3条書面」といいます。)を交付しなければならない旨が定められています。3条書面において示すべきとされている取引条件は以下のとおりです。

〈3条書面における記載事項[7]

  • 親事業者および下請事業者の名称
  • 製造委託等をした日
  • 下請事業者の給付の内容
  • 下請事業者の給付を受ける期日または期間
  • 下請事業者の給付を受領する場所
  • 下請事業者の給付の内容について検査する場合、検査を完了する期日
  • 下請代金の額
  • 下請代金の支払期日および支払方法[8]
  • 原材料等を有償支給する場合は、その品名、数量、対価、決済方法等

 取適法においては、発注書面等作成義務が同法4条に定められたこと(改正後の3条書面の呼称は「4条書面」となると考えられます。)、および下請法改正により手形払いが禁止されることなどから、当該改正との関係で3条規則が改正されることになります[9](改正後の呼称は「4条規則」となると考えられます。)。4条書面に記載すべき事項についても、従前の3条規則に規定された内容から変更されます。2026年1月1日の取適法施行に備えるため、実務的には2025年10月頃に公開予定とされる改正後の規則や運用基準を確認することが重要です。弊所においても、改正後の規則等の公開がなされた後に改めて発信を行う予定です。

(2) フリーランス法

 フリーランス法では、3条1項において、業務委託事業者が特定受託事業者(以下「フリーランス」といいます。)に対し、取引条件を明示(以下「3条通知」といいます。)しなければならない旨が定められています。3条通知によって明示すべきとされている取引条件は下記のとおりです。

〈3条通知における記載事項〉

  • 業務委託事業者および特定受託事業者の名称
  • 業務委託をした日
  • フリーランスの給付内容
  • 給付を受領または役務の提供を受ける期日
  • 給付を受領または役務の提供を受ける場所
  • 給付の内容について検査する場合、検査を完了する期日
  • 報酬の額、支払期日および支払方法[10]

 

〈3条通知の主体〉

3条通知は、「業務委託事業者」が「特定受託事業者」(フリーランス)に対して行うものです。フリーランス法3条にいう「業務委託事業者」にはいわゆるフリーランスも含まれることから、フリーランス同士での取引であっても、3条通知を発出する必要があります。

 また、3条通知の方法として、下請法と同様の例外的な規定が定められています。
 具体的には、報酬の額について、具体的な金額の明示をすることが困難なやむを得ない事情がある場合、報酬の具体的な金額を定めることとなる算定方法を明示することも認められます。もっとも、この算定方法は、報酬の額となる算定根拠となる事項が確定すれば、具体的な金額が自動的に確定するものである必要があり、算定方法の明示と3条通知が別のタイミングである場合には、これらの相互の関連性を明らかにしておく必要があります。さらに、報酬の具体的な金額を確定した後、速やかにフリーランスに当該金額を明示する必要があります。[11]
 明示事項のうち内容を定めることができない事項がある場合には、そのことにつき正当な理由があるもの(以下「未定事項」といいます。)は、明示の必要がありません。3条通知により取引条件を明示する時点で未定事項がある場合には、未定事項以外の事項を明示するほか、未定事項の内容を定めることができない理由および未定事項の内容を定めることとなる予定期日を当初の明示として明示すれば足ります[12]。ただし、未定事項が定められた後直ちに、当該事項を明示する必要があり、当初の明示と補充の明示については、相互の関連性を明らかにしておく必要があります。
 共通事項がある場合には、あらかじめ共通事項を明示した場合、あらかじめ明示した共通事項と3条通知との関連性を記載すれば、共通事項を業務委託の都度明示することは不要になります[13]

【再考】再委託時の支払期日の特例を適用させる場合に明示する事項

支払期日を元委託者からの対価の支払期日から起算して30日以内の期間内で設定したい場合には、業務委託事業者はフリーランスに対し、

  • 再委託である旨
  • 元委託者の商号、氏名もしくは名称または事業者別に付された番号、記号その他の符号であって元委託者を識別できるもの
  • 元委託業務の対価の支払期日

を明示する必要があります。

 3条通知に関する詳細な説明は、公正取引委員会が作成したパンフレット[14]フリーランス法ガイドラインに記載されておりますので、そちらもご確認ください。

(3) トラック法

 2025年4月1日に施行された改正により、トラック法では運送契約締結時において、提供する役務の内容やその対価(附帯業務量、燃料サーチャージ等を含む。)等について記載した書面を交付することが義務付けられました。トラック法に基づく書面交付義務は2種類存在しています。一つ目は、真荷主とトラック事業者[15]が運送委託契約を締結する場合に、相互に書面交付を行うもの[16]、二つ目は、トラック事業者等が利用運送を行う場合に、委託先へ書面交付を行うもの[17]です。これらの交付書面における記載事項は以下のとおりです。

〈交付書面における記載事項〉

  • 運送役務の内容、対価
  • 運送契約における荷役作業、附帯業務等が含まれる場合、その内容と対価
  • その他特別に生ずる費用に係る料金(例:高速道路利用料、燃料サーチャージ等)
  • 運送契約の当事者の氏名、名称および住所
  • 運賃、料金の支払方法
  • 書面の交付年月日

 下請法やフリーランス法と大きく異なる点は、真荷主とトラック事業者との間では、発注者からの交付だけでなく「相互に」書面交付が求められていること、運送契約において荷役作業および附帯業務等が含まれる場合にはその内容と対価を記載することが明確に求められている点、および書面の交付年月日の記載が求められる点です。相互に書面を交付し、かつ、当該書面には「作成」年月日ではなく、実際に書面を交付した日を記載する必要があるため、ご留意ください。
 記載例については、国交省「改正貨物自動車運送事業法 Q&A」6頁および10頁に記載されていますので、作成の際にご参照ください。

2 下請法およびフリーランス法が適用される場合

 下請法とフリーランス法の双方が同一の業務委託について適用される場合、委託事業者は、両法が定める記載事項をひとつの発注書面等で示すことができます。この場合、下請法とフリーランス法のいずれか一方にのみに基づく記載事項がある場合は当該事項を全て記載する必要があります[18]
[表1] 下請法およびフリーランス法が適用される場合における記載事項

3 下請法およびトラック法が適用される場合

 下請法とトラック法の双方が同一の業務委託について適用される場合、委託事業者は、両法が定める記載事項をひとつの発注書面等で示すことができます[19]。この場合、下請法およびフリーランス法が適用されるときと同様に、下請法とトラック法のいずれか一方にのみに基づく記載事項がある場合は当該事項を全て記載する必要があります。
[表2] 下請法およびトラック法が適用される場合における記載事項

4 フリーランス法およびトラック法が適用される場合

 フリーランス法とトラック法の双方が同一の業務委託について適用される場合、委託事業者は、両法が定める記載事項をひとつの発注書面等で示すことができます[20]。この場合、フリーランス法およびトラック法のいずれか一方にのみに基づく記載事項がある場合は、当該事項を全て記載する必要があります。
[表3] フリーランス法およびトラック法が適用される場合における記載事項

※1 トラック法と異なり、法令や規則における記載事項として明記されていませんが、下請法ガイドライン上、給付の内容を「明確に記載する必要がある」とされていることに鑑みると、記載する必要があると考えるべきです。フリーランス法も同様です。

※2 「特別に生ずる費用に係る料金」もまた下請代金または委託代金の一部を構成する場合には、少なくとも代金の「算定方法」として「特別に生ずる費用に係る料金」を下請代金額または委託代金額として記載する必要があります[21]。フリーランス法も同様です。

※3 下請法では資金移動業者を用いた下請代金の支払いが認められていないため、このような支払方法をとることができません。

※4 フリーランス法と異なり、下請法では再委託の場合における支払期日の特例は存在しません。そのため、下請法の適用を受ける限り、フリーランス法上の再委託の場合における特例を適用させたとしても、受領日から60日以内に下請代金または委託代金の支払いをする必要があります。

※5 トラック法においても、「運賃及び料金の支払の方法」(トラック法施行規則13条の3、13条の7)が記載事項とされていますので、手形払い等による場合には、それに応じた記載が必要であると考えるべきです。

※6 [表2]の場合における取引内容はトラックによる運送委託であるため、現実的には原材料等の有償支給は想定され難いといえます。したがって、実務上、本項目を発注書面等に記載することはないと考えられます。

第2 発注書面等の作成・交付方法

 次に、第1で記載内容をご紹介した下請法(取適法)、フリーランス法、およびトラック法により作成が義務付けられている発注書面等について、実務的によく用いられる電磁的方法による作成・交付方法についてご紹介します。

1 各法律における作成・交付方法

 下請法(取適法)、フリーランス法、およびトラック法が単独で適用される場合を想定してご紹介します。

(1) 下請法

ア 3条規則
 3条書面の交付に際しては、下請事業者の承諾を得た場合にのみ電磁的方法による提供を行うことが可能です。さらに、「電磁的方法」は公正取引委員会が定める規則で定められたものに限られることに注意が必要です。現行法令である下請法との関係では、「下請代金支払遅延等防止法第3条の書面の記載事項等に関する規則」(以下「3条規則」といいます。)が上記にいう規則です。現行の3条規則を前提とすると、①「電気通信回線を通じて送信し、下請事業者の使用に係る電子計算機に備えらえたファイルに記録する方法」、②「電気通信回線を通じて下請事業者の閲覧に供し、下請事業者の使用に係る電子計算機に備えらえたファイルに記録する方法」、および③「電磁的記録媒体をもって調製するファイルに書面に記載すべき事項を記録したものを交付する方法」の電磁的方法の使用が認められています。具体的には、

  • 委託事業者が中小受託事業者に対して電子メールを送信する
  • 委託事業者が中小受託事業者に対して電子データを保存した記録媒体(USBメモリ、CD―R等)を交付する
  • 委託事業者が使用するクラウドストレージサービスに保存した電子データをダウンロード可能な方法で中小受託事業者に閲覧させる

といった方法が考えられます[22]
 いずれの場合であっても、中小受託事業者が3条書面の内容をダウンロードすることができる機能を有するほか、交付した書面を印刷できる機能を有する必要があります[23]。
 なお、今般の下請法改正により、4条書面(下請法にいう「3条書面」)の交付義務について、中小受託事業者の承諾の有無にかかわらず、電磁的方法により提供することが可能になりました。

イ 4条規則(取適法施行後)
 取適法においては、発注書面等作成義務が同法4条[24]に定められたこと、および下請法改正により手形払いが禁止されることとなったことから、当該改正との関係で3条規則が改正されることになります(改正後の呼称は「4条規則」となると考えられます。)。
 下請法3条では「書面の交付等」という条文見出しがなされ、「書面を下請事業者に交付しなければならない。」と規定されていました。下請法3条に相当する取適法4条では「中小受託事業者の給付の内容その他の事項の明示等」との条文見出しになり、「当該事項を書面又は電磁的方法により中小受託事業者に対し明示しなければならない。」との表現に変更されています。下請法3条での「交付」という文言が、取適法4条では、あえて「明示」という文言に変更されていることに鑑みると、同じく「明示」という文言を用いるフリーランス法の運用と同様の内容に4条規則が制定されることも想定されます[25]。実際、2025年7月16日に公開された4条規則の改正案[26]では、現行の3条規則において記載があった、受信者または下請事業者「の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに記録する方法」(3条規則2条1項イ・ロ)という文言や、「下請事業者がファイルへの記録を出力することによる書面を作成することができるものでなければならない」という文言が削除されているほか、下請法ガイドラインの改正案では、現行の3条規則で電磁的方法として求められるダウンロード機能が不要となって、フリーランス法と同様に、SNSのダイレクトメッセージ等で「明示」を行うこと等が許されることになっています[27]。この点に関しては、改正後の規則等が公開され次第、改めてお知らせいたします。

(2) フリーランス法

 フリーランス法に規定された「電磁的方法」による取引条件の明示は、

  • 「電子メール等」[28]による方法[29]
  • 「電磁的記録媒体をもって調製するファイルに明示すべき事項を記録したもの」を交付する方法[30]

が存在しています。フリーランス法の下では、3条通知を電磁的方法により提供するにあたってフリーランスの承諾は不要とされていますが、当該フリーランスから書面交付請求があった場合には、電磁的方法による提供を行っていたとしても、書面による3条通知の提供が必要になります[31]
 なお、下請法とは異なり、フリーランス法では、3条通知による取引条件の明示を受けたフリーランスが当該3条通知の内容をダウンロードできることが義務付けられておらず、トラブル防止の観点から当該3条通知の内容をフリーランスが自ら電子ファイル等に記録して保存することが望ましいとされているに留まります[32]

ア 「電子メール等」による方法
 3条通知のために用いることが許される「電子メール等」とは、電子メール、SMS(ショートメッセージサービス)、SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)のダイレクトメッセージ等をいいます。具体的には、

  • 明示事項を記載した電子ファイルを添付した電子メールをフリーランスが指定する電子メールアドレス宛に送信する
  • 明示事項を記載したメッセージをSNSのダイレクトメッセージ機能を用いてフリーランス宛てに送信する
  • 明示事項の一部を掲載しているウェブページをあらかじめインターネット上に設け、他の明示事項とともにそのウェブページのURLを記載した電子メールをフリーランスが指定する電子メールアドレス宛に送信する
  • 明示事項を記載した書面等を、電磁的記録を電子ファイルに記録する機能を有するフリーランスのファックス(電子ファックスなど)へ送信する

といった例を挙げることができます[33]

イ 「電磁的記録媒体をもって調製するファイルに明示すべき事項を記録したもの」を交付する方法
 3条通知のために用いることが許される「電磁的記録媒体をもって調製するファイルに明示すべき事項を記録したもの」とは、明示事項を記載した電子ファイルデータを保存したUSBメモリやCD―R等をいいます[34]

(3) トラック法

 トラック法の下では、契約の相手方から承諾を得た場合に限り、「電磁的方法」による書面提供が認められています。トラック法に規定された「電磁的方法」による書面交付は、電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であって国土交通省令で定められたものをいい[35]、具体的には、

  1. 電子メール等による方法
  2. 「送信者等の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに記録された記載事項を電気通信回線を通じて受信者の閲覧に供し、受信者等の使用に係る電子計算機に備えられた当該受信者の受信者ファイルに当該記載事項を記録する方法」
  3. 「送信者等の使用に係る電子計算機に備えられた受信者ファイルに記録された記載事項を電気通信回線を通じて受信者の閲覧に供する方法」
  4. 「電磁的記録媒体をもって調製するファイルに記載事項を記録したものを交付する方法」

が認められています。施行規則の条文上、「受信者のファイルに…記録する」と記載されておりますので、下請法と同様に、ダウンロード機能を有する必要があります。
 また、トラック法の下では、電磁的方法により書面提供を行う場合、下請法と同様に、受信者が提供された書面の内容を印刷できる状態にあることが必要のほか、②や③の場合には、提供書面が受信者ファイルに記録する又は記録された旨を通知する機能を有することが必要です[36]
 具体的には、

  • 電子メール[37]や電磁的記録を電子ファイルに記録する機能を有するファックス(電子ファックスなど)[38]への送受信
  • ウェブサイト上に表示された記載事項を契約の相手方がダウンロードする方法
  • 契約の相手方がログインして閲覧するインターネットページにアップロードする方法
  • CD―R等に記録して契約の相手方に交付する方法

といった例を挙げることができます[39]

2 下請法およびフリーランス法が適用される場合

 下請法およびフリーランス法が適用される場合において、両法に基づく発注書面等作成義務を同一の書面により履行するときに用いることができる電磁的方法は、ダウンロード機能や印刷機能を有する必要があります。
[表4] 下請法およびフリーランス法が適用される場合

また、参考として、2025年7月16日に公開された4条規則の改正案に基づいた場合をまとめると以下のとおりです。
[表4 参考] 取適法およびフリーランス法が適用される場合(2025年7月16日に公開された4条規則の改正案に基づく)

3 下請法およびトラック法が適用される場合

 下請法およびトラック法が適用される場合において、両法に基づく発注書面等作成義務を同一の書面により履行するときに用いることができる電磁的方法は、ダウンロード機能や印刷機能を有する必要があります。
[表5] 下請法およびトラック法が適用される場合

4 フリーランス法およびトラック法が適用される場合

 フリーランス法およびトラック法が適用される場合において、両法に基づく発注書面等作成義務を同一の書面により履行するときに用いることができる電磁的方法は、ダウンロード機能や印刷機能を有する必要があります。
[表6] フリーランス法およびトラック法が適用される場合

第3 まとめ

 最後に、下請法、フリーランス法、及びトラック法が単独で適用される場合を想定し、各法律における記載事項や作成・交付方法の違いを表でお示しします[40]
 発注書面等に係る法規制を遵守するためには、下請法、フリーランス法及びトラック法が適用される取引かどうかの判断が正確にできるようにする必要があるとともに、適用があるとして、それぞれの法令が求める発注書面等の要件を満たす必要があります。2026年1月1日の取適法の施行後においては、取適法の適用対象取引として特定運送委託が新たに追加されることになり、トラック法との重複適用が発生する場面も増えるものと想定されます。本コラムは、これらの複雑な法規制の重複適用がなされる場面について、実務の参考になることを期待して執筆したものです。皆さんの法規制対応への一助になれば幸いです。

1 記載事項

[表7] 下請法・フリーランス法・トラック法における発注書面の記載事項の違い

2 作成・交付方法

[表8] 下請法・フリーランス法・トラック法における発注書面の交付方法の違い

 

[1] 公取委HP(公正取引委員会フリーランス法特設サイト | 公正取引委員会

[2] 国交省HP(物流:改正貨物自動車運送事業法(令和7年4月1日施行)について – 国土交通省

[3] 公取委HP(中小受託取引適正化法関係 | 公正取引委員会

[4] 下請法の改正により、法令名が「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払と遅延等に関する法律」(取適法)に変更されます。下請法改正の概要については、リンク先をご参照ください。

[5] 下請法上の「親事業者」を指します。

[6] 下請法上の「下請事業者」を指します。

[7] 執筆時点における現行法である下請法に基づく3条規則を前提にした記載です。

[8] ここにいう「支払方法」には、手形、一括決済方式、又は電子記録債権を支払に用いる場合における、当該支払方法に係る記載事項を含みます。

[9] 2025年7月16日にリンク先において、改正案が公表されました。

[10] ここにいう「支払方法」には、手形、一括決済方式、又は電子記録債権を支払に用いる場合における、当該支払方法に係る記載事項を含みます。

[11] フリーランス法ガイドライン 第2部第1の1(3)キ

[12] フリーランス法ガイドライン 第2部第1の1(3)ケ

[13] フリーランス法ガイドライン 第2部第1の1(3)コ

[14] 公正取引委員会「ここからはじめる フリーランス・事業者間取引適正化等法」

[15] 「一般貨物自動車運送事業」の経営につき国交大臣から許可を受けた者(トラック法3条)をいいます。

[16] トラック法12条1項参照。

[17] トラック法24条参照。

[18] フリーランス法Q&A Q32

[19] 改正貨物自動車運送事業法Q&A 問2‐9

[20] フリーランス法Q&A Q32改正貨物自動車運送事業法Q&A 問2‐9

[21] 下請法講習会テキスト Q43、フリーランス法ガイドライン 第2部第1の1(3)キ(ア)および(ウ)

[22] 電磁的方法による3条書面の交付に関しては、3条規則のほか、公取委「下請取引における電磁的記録の提供に関する留意事項」および下請法ガイドライン第3の3をご参照ください。

[23] 3条規則2条1項・2項

[24] 取適法4条1項(中小受託事業者の給付の内容その他の事項の明示等)「委託事業者は、中小受託事業者に対し製造委託等をした場合は、直ちに、公正取引委員会規則で定めるところにより、中小受託事業者の給付の内容、製造委託等代金の額、支払期日及び支払方法その他の事項を、書面又は電磁的方法(電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であつて公正取引委員会規則で定めるものをいう。以下この条において同じ。)により中小受託事業者に対し明示しなければならない。ただし、これらの事項のうちその内容が定められないことにつき正当な理由があるものについては、その明示を要しないものとし、この場合には、委託事業者は、当該事項の内容が定められた後直ちに、当該事項を書面又は電磁的方法により中小受託事業者に対し明示しなければならない。」

[25] 令和7年6月27日時点における執筆者の考えであり、正確な改正方針は令和7年10月頃に公開予定とされる改正後規則や運用基準をご参照ください。

[26] 4条規則(案)2条1項1号

[27] 下請法ガイドライン改正案 第3の3ア

[28] 「電子メールその他のその受信をする者を特定して情報を伝達するために用いられる電気通信(電気通信事業法(昭和五十九年法律第八十六号)第二条第一号に規定する電気通信をいう。)」を指します。

[29] フリーランス法施行規則2条1項1号

[30] フリーランス法施行規則2条1項2号

[31] フリーランス法3条2項、フリーランス法ガイドライン 第2部第1の1(6)

[32] フリーランス法ガイドライン 第2部第1の1(5)イ(ア)

[33] フリーランス法ガイドライン 第2部第1の1(5)イ(ア)

[34] フリーランス法ガイドライン 第2部第1の1(5)イ(イ)

[35] トラック法12条3項同法24条3項

[36] トラック法施行規則13条の4第1項・第2項

[37] 電子メールに法定事項を記載したPDFファイル等を添付する方法だけでなく、メール本文に法定事項を記載して送信する方法も可能です。

[38] 受信と同時に書面に出力されるファックス(通常のファックス)へ送信する方法を用いる場合は、「電磁的方法による提供」に該当しないため、相手方による事前の承諾は不要です。

[39] 改正貨物自動車運送事業法Q&A 問2-20

[40] 下請法およびフリーランス法の比較については、フリーランス法Q&A Q35もご参照ください。

[41] 取適法の施行により、変更があります。

[42] 取適法の下では、中小受託事業者(下請事業者)による承諾が不要になります。

[43] フリーランス法3条2項により、発注事業者が電磁的方法により取引条件の明示を行った場合であっても、フリーランスが明示事項を記載した書面の交付を発注事業者に対して要求することができます。取適法4条2項も同様の条文となっています。

 

※本コラムは、一般的な情報提供を目的としたものであり、当事務所の法的アドバイスを構成するものではありません。コラム内の意見等については執筆者個人の見解によるものであり、当事務所を代表しての見解ではありません。個別具体的な問題については、必ず弁護士にご相談ください。

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